日記
2008年 4月 15日 (火) 00:52


母に負けずに・・・。
by ubu

 もう8年ほど前のことになる。サモエドのラーナがダーチャたちと春の堅雪(日中に融けた雪が夜の寒気で凍り、人間が乗っても沈まない堅さになる)の上を駆け回って遊んでいるうちに、我が家から直線で2キロほど離れた所で遭難したことがある。
 行方不明に気付いたのは、あの食いしん坊のラーナが、午後3時頃の餌の時間にも戻っていなかったからだ。
 
 薄暗くなった雪原を歩き、林や沢を探した。しかし、どこにも姿はなく、人間の夕食後、再び捜索に出た。
 そして午後11時頃だったろうか、半ばやけくそでラーナと大声で叫んだ。
 
 その直後だった。遠くで高い犬の声がした。
 月夜だった。雪の季節、満月の力は強い。しかし、探している犬はサモエド、白い犬、雪の上では見つけ難い。
 
 私は名前を呼びながら、鳴き声のする方向に進んだ。
 
 沢に近づいた。
 ますます犬の声は大きくなり、ラーナのものだと確信した。
 しかし、姿はどこにもない、懐中電灯は、ただただ雪原を照らしていた。
 
 沢のもっとも低い所には小川があった。夏はクレソンが繁り、清流には小魚もいた。
 その川も冬の間は雪に覆われ、一面の雪原と化し、どこに川があるのかは分らない。

 私は耳を澄ませた。
 
 遠くで救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
 それに重なるように、またラーナの声が聞こえた。

 ゆっくりと懐中電灯を雪原にそって動かした。
 30メートルほど先に黒ずんだ所があった。
 私は近づいた。穴だった。水の流れる音をバックに、ラーナがまぶしそうな顔で私を見上げた。濡れた尾を懸命に振っていた。
 
 おそらく遊んでいるうちに、覆っていた雪が薄くなった所を踏み破り、ラーナは雪下の小川に落ちたのだろう。
 雪面までの高さは1メートル20センチほど、不幸な事にこの時期の川は、まさにトンネル状になっている。どんなにがんばってもドッグレッグした雪の壁を登ることは、犬には不可能だった。
 深夜、私と女房は、ずぶ濡れのラーナをあたため、熱い餌を与えた。

 そして今日、ラーナの最後の子供になるアリーナ(たぶん、間もなく1歳)が事件を起こした。
 経過を短く書いてみよう。

 8時30分 カボス、エニセイ、チロル、ハコ、タングとともに
       フリーになる。天候も良く、みんなで駈け回る。
 9時15分 カボスを先頭に、エニセイ、ラーナ、ハコ、林から川
       の方向に消える(自主的自由散歩)。
 9時50分 カボスとエニセイ、ハコだけが戻る。
10時 5分 夫婦でアリーナを探しに行く。見つからない。
10時50分 チロルを連れて再度、当幌川方面に捜索にでる。チロ
       ルは自分だけの依怙贔屓散歩かと、笑顔で嬉しそう。
11時10分 川沿いでチロル、なにかの音をチェック。アリーナと
       呼ぶと必死さを感じる声が聞こえた。ドッグレッグし
       た岸と崩れた崖に囲まれた川面で泥だらけのアリーナ
       を発見救助。
11時25分 家に戻る。
11時40分 名前をアリーナから「ワリーナ」に戻そうかと女房と
       ふたりだけで検討委員会を開く。
11時46分 ワリーナ、熟睡。

 昔、パグ犬が同じような状況に陥った時、同行していたコリーのモティは、ひとり家に戻り、鳴いて人間に急を知らせた。
 今日、我が家のカボスもエニセイも、それらしき素振りは一度も示さなかった。
 薄情ものかもしれない、、、。




 



T R A C K B A C K

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