2003年8月


 天候不順の続くこの夏、珍しく晴れ上がった日もある。
 私は、深呼吸をした後、車を東へ向けた。
 「野付半島」・・・ノツケとはアイヌ語で「あご」の意味である。半島の先端が陸地側に向かって大きく彎曲し、人のあごに似ているところから、そう呼ばれたらしい。
 半島の有名地「トドワラ、ナラワラ」は、海水に侵食されて枯れ、それが風化したトド松やナラ林である。折れ、倒れ重なり、まるで大地に還る骸骨のような樹木の姿は、北の自然の厳しさを表わしている。
 留鳥になったオジロワシが海峡の上を飛んでいた。その向こうには、山頂に白い雲をまとった爺爺岳を有する国後島が水平線上に横たわっていた。
 ノハナショウブの紫が、ほっとしたように陽光に輝いていた昼.........やっと訪れた夏らしさ、しかし、気温は24度までしか上がらなかった。
〈津田 典秀〉






ムツゴロウ動物王国「いしかわさんの命がいっぱい」

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